飛ぶネコにとっては憂鬱です。
お日様の暖かい日差しが恋しくなるから。
一日家の中で過ごさなければならないから。
洗濯物が乾かないから。
数日続く雨を窓から眺めて、
いつ止むんだろう、とつぶやく途端に、
子どもたちに伝染する負の空気。
「雨の日は嫌い、なんて言っちゃダメよ。
雨がないと、水が飲めなくなっちゃうんだから、
この雨だって、神様からのお恵みなのよ。」
と、宗介のお母さん(『崖の上のポニョ』のリサ)のマネをして
気分を晴らそうとしてみたりします。
雨の晴れ間。
4歳と2歳の息子を連れて散歩に出かけることに。
雨上がりのにおいと外の新鮮な空気をゆったり楽しんでいると、
息子たちはすでに視界の外。
やっと外に出られる!という解放感が
彼らのロケット噴射に火をつけたらしいです。
待ってください。
解放=事件
という方程式があるのをご存知ですか?
だから、次に飛ぶネコが目にしたものは、
雷に打たれたかと思うほど衝撃的でした。
息子二人はトランポリンでもしているかのように
水たまりで飛び跳ね、大はしゃぎだったのです!
飛ぶネコが追いついた頃には
全身ビショ濡れ。
乾いているところが見当たらないほどの濡れようです。
ため息しか出てきません。
ここまでずぶ濡れだと、
靴が濡れるから、服が汚れるから、
風邪をひくから…。どの言い訳も使えません。
飛ぶネコが何も言わないのをいいことに
息子たちの笑い声がこだましていきます。
向こうから若者がやってくるのが見えたので
しぶきがかからないように、息子たちをなだめに行きました。
「いいお母さんですね。」
はい? いま、なんと???
「わたしのどこがいいお母。。。。」
と言いかけた時、
「ぼくが子どもの頃、
母親はぜったい、水たまりで遊ばせてはくれませんでしたよ。」
そう言って、
青年に気づかずに遊ぶ息子たちに優しいまなざしを向けて
彼は通り過ぎて行きました。
え?いいお母さん?
あ!わたし、いいお母さんになれたんだ―――!!!
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子育てに対する自信がなくて
飛ぶネコの心も連日雨模様に感じている時でした。
何日か前、ご近所のお母さんは
子どもと一緒に雨の中で踊っていたんです。
お母さんは、唄いながらバレリーナのように、
子どもたちは傘をクルクル回しながら。
まさに、Singin’ in the Rain です。
そんなご近所さんに視線が釘付けの息子たちがいたことに
気づいていたんです。
飛ぶネコも心の中で、楽しそうだな、とは思っていたのですが、
それを口に出すことをかたくなに拒否していたのに
気づいていたんです。
仕事が増えるんだから、やってられないよ、そんなこと、って。
でも、そんな余裕のない自分にガッカリもしていました。
不平と言い訳だらけで埋まりそうだったその日の日記は、
別の世界を見せてくれた青年の一言のおかげで
飛ぶネコの育児教訓として綴られて、
生涯心に残る思い出になったのでした。