短期な夫に、期長な妻

「分かってくれないならもういいよ!」


結婚して初めてのケンカ。


きっかけは、今の仕事を辞め、
転職することを打出したことから。


取引先の社長さんから、
とある事業拡大の為のチームリーダーとして働こう
とのお声掛け、
年収は少なくとも今の3倍、
努力次第で地位も名誉も得ることができる
一世一代のビッグチャンスだって。


「家族を楽にさせたいし、誇れる仕事にだって就きたい。
こんなにいい話ないじゃん。」


「そう、じゃあ家族の時間はどうなるの?」


仕事のおよそ8割は出張で家にはほとんど帰れない、
休みも現実、月に1、2日取れればいい方なんだとか。


「私は絶対に反対。」


妻のお腹には、3ヶ月後に出産予定の男の子がいる。


口論の末、反対を押し切って
翌日の会社面談の準備をし眠りにつく私、
ただ呆然と立ち尽くし現状が把握できないままうつむく妻…


夜遅くだった…目が覚めた先の明かりに
妻が玄関ですすり泣いているのが見えた。


片手に私の靴を持ち、ブラシで綺麗に磨いていた。
面談が、うまくいくように。





-「俺、すぐ船酔いしちゃうんだよね。」

-「そういう時は遠くをみるといいんだよ。目先ばかりに気をとられると人は酔いやすくなるんだって。」


妻はいつだって、私よりも先を見てる。

 
翌日、面談には行ったものの、
社長さんにはお誘いへの断りと、
より一層のサポートを約束し家路についた。


子供の誕生や成長に
夫婦で過ごす時間から得られるものは、
私が思ってた以上に大切で幸せな時間。


いかなる成功も、家庭の失敗を償うことはできない
デビット・O・マッケイ


その言葉の意味が、今はちょっぴり分かる30歳。
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