先日、娘が学校から泣いて帰ってきました。
事情を聴いてみると、一緒に帰って来たお兄ちゃんに意地悪されたとか。
では、お兄ちゃんの言い分はというと、
「歩くのが遅すぎるんだよ。」とのこと。
うちの三男坊。しっかり者ですが、
少々心配性なところがあります。
学校に遅刻したくない彼は、30分前に家を出ます。
学校には5分で行けるのに。
そんな彼ですから、
朝、支度の遅い妹を待ってはいられません。
ですから、朝は兄妹別々に学校へ行きます。
帰りはお兄ちゃんが妹を教室まで迎えに行き、
一緒に帰ってきてくれるのですが、
早く家に帰りたい兄は、
ゆっくりと歩いている妹に付き合いきれない様子。
思い通りにならない事柄にイライラする彼の気持ちは理解できました。
でも、『みんながあなたと同じように行動するわけではない。
それをわかって、相手のペースもわかってあげないと。』
と、いうことを諭ってもらいたかった母は、
「あなたのように、なんでもパッパッとできる人もいる。
そういう人は、短い時間でたくさんのことができるよね。
でも、あなたの妹のように、一つのことに時間をかける人もいる。
そういう人は、あなたが道端で見つけられなかった花や、虫に気が付ける人だったりするのよ。」
なんて、詩を朗読するかのように、優雅に説得しようと試みました。
セレナーデのような音楽が一変、
照明が春のような淡い色から紺青の闇の色に変わります。
兄は語り始めます。
「父と母から、『妹をヨロシク』と頼まれたからには、
妹と一緒に居なくては、と思い、
2年間、我慢してやってきたのです。」
課せられた責任とその重さに耐えられず苦悩する少年の背中と涙。
彼にとってはこの2年間が苦痛であったかのように、
「もう我慢できない」という気持ちを訴えてきました。
「妹のクラスメートでお兄ちゃんと一緒に帰っている子がいるけど、
その子たちは、ちゃんとお兄ちゃんについて行っている。
僕の妹だけだよ、ノロノロ歩いているのは。」
なんで僕だけ、妹に合わせなくちゃいけないの的な言い分でした。
ジャジャジャ ジャーン~!!!!
これまでの感情の嵐の舞台に
パッとついた豆電球の照明。
あ~、そうですか。
そこまで言うのなら、仕方がないですね。
じゃ、あなたがその責任を引き受けるのが嫌だというのなら、
それは母さんがやるしかないでしょう。
「明日からは、かあさんが妹を迎えに行きます。」
こんなことに付き合っていられないと思った母が
あっけなく幕を閉じて終わるはずでした。
ところが、そこへヒーローが出現。
「だったら、兄ちゃんが迎えに行ってあげるよ。」と長男。
「あ~、僕も迎えに行けるよ~。」と次男。
『あら、こんな身近にヒーローが!』
母の顔がニマリとしたのを三男に見られてはいけない、
と、必死にこらえます。
めでたし、めでたし、とこんな美談で幕が下りるとは。
と思いきや、またまた思わぬ展開が。
「いいよ、そこまでしなくてもっ!
僕が連れて帰ってくるよっ!」と三男。
母「嫌だったらいいのよ。かあさんもお兄ちゃんも迎えに行けるんだから。」
三男「いいんだよ!僕がやればいいんだから!」
母「だから、嫌ならいいって言ってるの。」
三男「だから、いいんだってば!」
この段階で母は、意地悪な母役を楽しんで演じておりました(笑)。
兄たちよ、君たちは、弟に良い模範を示してくれたねぇ。
お陰で弟は、難しいことを投げ出さずにもう一回やってみようという気になってくれたじゃないか。
腰に手を当てて、夕日に向かって言ってみたいセリフを頭に浮かべながら。
「明日もう一回、やってみたいの!
かあさんと兄ちゃんたちが迎えに行くかどうかは、それから決めてもいいでしょ!」
という三男のセリフが、この珍劇に幕を下ろしました。
これで一件落着と思ったら、
「それじゃ嫌だ。かあさんといっしょに帰るのがいい~。」と、
今度は娘がわめき始めました。
第二幕が予期せぬ速さで幕を開けました。
三男の攻撃から逃れて、帰宅の途が平和になると思っていた娘。
こんな展開ありえない!とでも思ったのでしょうか。
しゃくりあげながら、三男と帰るのは嫌だと訴え始めました。
これは、これは。
今度は娘との舞台を演じなければなりません。
「お兄ちゃんは、今日は失敗しちゃったけど、
明日もう一回、一緒に帰って、今日出来なかったことを上手にやりたいんだって。
妹のために、もう一回頑張ろうと思ってくれてる優しいお兄ちゃんじゃない。
あなたも、『お兄ちゃん、わたしを待っててくれてありがとう』、っていう気持ちになれる?」
再び優しく諭らせる母役で攻めてみました。
6歳の娘にはこの理屈はまだまだ理解不可能だったようで、
結局、泣きはらして、翌朝まで眠りについてしまいました。
眠り姫のように寝入っている娘を見つめながら
不完全燃焼で幕が下りたドラマについて考えていました。
はてさて、舞台裏、楽屋では俳優さんのこんな一面が。
女優A :飛ぶネコ
計画通りに事は運ばない。
激情ドラマの出現で
寸分の隙も無く計画していた夕飯の準備は後れを取り、
母のエクササイズの時間は完全に失われ、
結局、思い通りに事が運ばなかったことのストレスを追っているのは母じゃないですか。
でも、子どものストレスを受け止める役を全うできてよかったわよ、
なんて、自分に拍手喝さいを送ってみたり。
女優B:飛ぶネコ
親としたら、子どもが悲しむことのないように、
ついつい先回りして、つまずき石を取り去ろうとしてしまいがちですよね。
でも、子どもたちが自分でその石につまずいて痛さを経験してみたり、
石があったんだと気がついてみたり、
今度、つまずかないためにはどうしたらいいかを考えることは大事なことですね。
手を出さずに見守るっていうのが親だなぁ。
今度はそういうかっこいい役を完全に演じてみたいですねぇ。
女優C:飛ぶネコ
親がすべての問題を解決してあげなくてもいい。
むしろ、その方が子どものためにはいいんだなぁ。
というのを感じました。
もしかしたら、天におられる神様は、
そんな風に私たちを見守っておられるのかもしれないなぁ、と感じられた出来事でした。
女優D:飛ぶネコ
以前は、子どもの喧嘩が煩わしく、
自分の人生を狂わせていると思っていたのよね。
でも、最近は、あぁ、これが人生だな、なんて思えるように(笑)。
子どもらそれぞれの人生にもドラマがあるのよ。
その中のドラマに関わるのは親の役目なんだというのに目覚めて、
彼らの人生のドラマに出演して、大事な脇役を演じられることを誇りに思うわ。
助演女優賞をいただける日もそう遠くはないかも。
Fin
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あぁ、面白い!
3男くんの顔を思い浮かべながら読み進んじゃいました。
私も悲劇のヒロインにならないで、育児を楽しまないと、と思いました〜^_−☆
コメントありがとうございます!
子育てはチャレンジです。
そして、母の態度、気分で家庭の雰囲気は違ってくることも発見。
明るく、楽しくをモットーに、続けられるように励んでいます。
そしたら、自分も幸せな気分になれますものね。